******************
情報工学専攻M2の門倉です.
5/17(金)に海洋大学越中島キャンパスにて,2019年度測位航法学会全国大会に参加してきましたので,その報告をいたします.
昨年度までは全国大会は和暦でGPS/GNSS大会は西暦を使用してきましたが,今年度は全国大会も西暦表記になりました.今回は改元があり和暦で表記するのは時間的に難しかったのかなと思います.
「東京海洋大学越中島門」
いつも通り立て看板のみの撮影です.研究室の先生はいろいろやらなければならないことがあるようで同行とはなりませんでした(補注:場所が東京、越中島だからではありません。授業はありませんでしたが、他の案件がありました。アリバイもあります、念のため).
「各種音源を対象とする屋内測位プラットフォームの構築とその基本検討」
こちらは発表中の写真です.撮影者がいないので発表中の写真を撮影できない危機でしたが,テーブルの上にカバンを置き,そこにスマートフォンを立てかけることで撮影することができ最悪の事態は回避できました.
今回の発表者の中では私だけ屋内を対象とした研究でしたので,少しだけ内容が離れていました.しかし,私のつたない発表でも質問をいただいたので,伝わっていると感じました.
他の方の研究発表は,次のようなものが発表されていました.
・ RTK-GPS(GNSS)を用いた高精度測位によるロボットカーの走行
・ 未来の時点におけるRTK-GPSの精度予測システム
・ 受信した測位信号を処理して異常な信号を排除し精度を向上させる方法
等々,大きくいってしまえばGPSや測位に関する検証や提案なのですが,一つ一つがそれぞれのテーマに向けて研究を行っているため,測位とひとくくりに行っても多くのテーマが残されていると感じました.(私の研究も一応測位には入りますが,少し適用場所が違いますしね.)
さて,研究発表はこれくらいにして今回二つ目のテーマである,QZSSの最新動向についても書いていきます.
と,言っていますが,QZSSって何かわかりますか.QZSSとは日本が打ち上げて運用している衛星測位用の準天頂衛星で,「みちびき」と呼ばれています.(偉そうに言っていますが,あくまでさわりだけしか知りません)
QZSSについて詳しく知りたい方:http://qzss.go.jp/
去年の11月1日のGPS/GNSSシンポジウムのブログ記事にも書きましたが,その時にそれまで1機だったQZSSに3機追加され(打ち上げはすでにされていて,運用を開始した.),現在QZSSは4機体制で運用されています.今後は,さらに3基を追加し合計7機体制で運用される予定となっています.
今回の報告では,研究発表会の後に開催された「QZSS特別講演会」において,QZSSの今後についてお話を聞くことができましたので,その内容を簡単に記載していこうと思います.なお,講演内容を簡潔にまとめるためにQ&A方式で記載します.
「QZSS特別講演会の様子」
Q1: 7機に拡張する目的って?
A1: 現在の4機では,米国が運用しているGPSが無いと測位サービスを提供できませんが,7機に増加させることで日本のQZSSのみで測位サービスを提供できるようになります.
Q2: いつ開始するの?
A2: 2023年度中には運用が開始されます.
Q3: 測位精度(位置の正確さ)を向上させるための試みはあるの?
A3: これまでは衛星からの信号(Down信号)を監視局で受信する方法のみで衛星の位置を推定してきました.追加される5~7号機では,さらに,地上システムと衛星間で信号を往復させる(UP信号+Down信号)ことで,衛星の軌道位置誤差と衛星の時計誤差を正確に分離でき,地上と衛星間方向の位置誤差が改善されます.また,衛星間で測距を行うことにより衛星間の位置誤差が改善され,地上システムのみでは衛星位置の推定誤差が数mだったものを,数10cmまで精度を向上することができます.
Q4: これから先も日本向けのみでサービスを提供していくの?
A4: 今後は日本だけではなく,アジア太平洋地域への展開も行っていきます.
Q5: 攻撃への対策は?
A5: 衛星の信号へ干渉してくるスプーフィング(なりすまし)攻撃への対処として,航法メッセージの認証機能を追加します.
Q6: 障害への対策は?
A6: 衛星安否確認サービス(災害時に安否情報を衛星によりやりとりするサービス)は現在3号機から配信されていますが,障害が発生し運用ができなくなった時のために,追加される7号機により代替できる機能を追加します.(7号機を3号機の軌道に移動させる必要があるため代替には時間がかかります)
Q7: 機能が変更される点は?
A7: 現状は,5号機以降は測位のためのL2C信号を発信しないこと,米国との交渉によりL1C/A信号ではなくL1C/B信号へ変更されること,また,サブメーター級測位補強サービス(SLAS)と災害・危機管理通報サービスのための信号であるL1S信号も発信されない予定となっています.なお,これは受信器メーカー等とのヒアリングにより変更される可能性もあります.
Q8: 信号廃止による影響はないの?
A8: L2C信号を廃止する代わりに,今後主流となるL1,L5信号による2周波利用を促進します.また,他のL1C/AとL1S信号については,1~3号機による配信を継続するため,国内のサービスエリアは十分カバーしています.
Q9: 今後の予定は?
A9: 2020年度に1号機の後継機(QZS-1R)が打ち上げられ,2021年度より運用が開始されます.それに伴い,現在の1号機(QZS-1)の運用は停止されます.QZS-1Rは基本的に現在のQZS-1の信号を踏襲しますが,L1C/Aが停止されL1C/Bとなる可能性があります.
今回記載した内容については,私が聞き間違えたり見間違えたりした内容もあると思います.また,あくまで現時点での内容ですので今後変更になる点もあると思います.
しかし,7機体制になる意義はとても大きなものなので,実現してほしいと個人的には思います.
これで,2019年測位航法学会全国大会参加報告の記事を終わります.
お疲れ様でした。今年からRTK-GPSの応用を研究室のテーマの一つに設定しています。1年後はどのような成果?が出ているのか、出ていないのか分かりません。一寸先は闇、とはよく言ったものです。
0 件のコメント:
コメントを投稿