2013年12月27日金曜日

(続)HCGシンポジウム2013学会発表報告

毎年参加しているシンポジウムですが,今年は愛媛県松山市で開催されました.すでに当ブログでも今年のシンポジウムに関する記事[1][2][3]が公開されておりますのでその続きとなります.

ヒューマンコミュニケーションという研究分野では,人間中心設計(HCDHuman Centered Design)という考え方に注目が集まっています.今回のシンポジウムでは,『人々の生活を幸せで豊かにしていくICTとコミュニケーション』が統一テーマとして掲げられておりました.また,オーガナイズドセッションでも「ユーザセンタードデザインとデザイン思考」というタイトルで発表がなされておりました.

私たちの研究室でも,人間とコンピュータ,あるいは人間と情報サービスにおける「安全性」や「簡便性」などの視点から研究を進めています.「Usability」,「Accessibility」,「Reliability」,「Availability」,「Portability」,「Convenience」などの言葉でも表現できますが,いわゆる情報通信技術を使って,人間が感じることのできる「良さ」を追求することを研究目的にしています.
今回のHCGシンポジウムでの発表では,セキュリティに関するテーマが2件,簡便性に関するテーマが1件でした.これらのうち,口頭発表が1件,ポスター発表が2件でした.ポスター発表ではデモンストレーションも行いました.以下,3名の学生による発表を紹介します.


シンポジウム会場前にて
  

    発表題目:スマートフォンにおけるタッチジェスチャーを用いたバイオメトリクス認証手法

 


山田健一朗さん(修士2年)

研究室に配属されて3年目の山田君ですが,学部時代から精力的に学会発表をこなしてきています.修士論文を作成している最中ですが,2013年の締めくくりとして,今回のシンポジウムに参加しました.ユーザの行動的特徴量を利用して本人認証を行う手法を研究しています.卒研生(学部4年生)の頃は,キーボードからの特定のパスフレーズの打鍵タイミングを使って,機械学習を行うことで個人識別を実現する方法を研究しておりましたが,現在では,スマートフォンなどのタッチスクリーン上の操作やデバイスの保持姿勢など,人間が普段何気なく行っている動作から,コンピュータが自動的に特徴を見出し,学習する方法を研究しています.行動的特徴量として,「タッチ」,「フリック」,「ピンチイン」,「ピンチアウト」というタッチデバイス特有の操作に着目しています.

 今回の発表の質疑応答で,「なりすまし」の可能性についての質問に対しては,「画面の操作情報は視認できるため,なりすましされてしまう可能性もありますが,本研究では画面情報だけでなく,加速度も特徴として利用しており,端末の持ち方で発生する加速度までを視認してなりすますことは難しいのではないかと考えています」と答えていました.また,シンポジウムの感想について山田君に聞いたところ,「手話の方を通じて聴覚障害者の方と質疑応答をする難しさを知りました」,「インタラクティブ発表は初めてでしたが,研究について納得のいくまで対話することができ、貴重なご意見もいただけました」,「出発前日に体調を崩してしまったため,修論にむけて体調管理をしっかりしたいと思います」と語ってくれました.


    手指画像におけるカラーヒストグラム間のバタチャリヤ距離による生体認証手法 ~認証システムのパラメータ調整~

 


谷村 祐さん(修士2年)

同じく研究室配属3年目の谷村君です.プログラミングを得意とし,学部時代から他のメンバーと共に学会発表をコンスタントにこなしてきており,修士論文をまとめるために今回のシンポジウムに参加しました.教育支援システムの開発とセキュリティの確保について研究を進めています.課題レポート提出支援システムの開発,アドバイス機能付きリマインドサーバの構築を経て,キーボード上の手指形状を身体的特徴量として活用することで生体個人認証(バイオメトリクス認証)を実現するシステムの開発・評価を行っています.これまでに私たちの研究室で行ってきた研究をベースにしていますが,Webカメラなどの廉価のカメラをリアルタイムで駆動し,連続的に撮像・認識・判定までの一連の動作を行うプログラムの開発を行っています.

今回の感想について谷村君に聞いたところ,「いつもの口頭発表とは違う,ポスターでの発表を行いました.口頭発表の質疑ではできないような対話ができたため,とても良い経験になりました」と答えてくれました.


    発表題目:オンライン配布資料へのノート機能自動付与ウェブシステムの開発

 


 
星野裕樹さん(学部4年)

研究室に配属されて1年目の星野君ですが,来年度は大学院に進学し,さらに2年間研究することになっています.クライアントサーバシステムの開発やWeb系プログラミングに興味があり,学会発表にも大変積極的に取り組んでいます.今回は,卒業論文をまとめるためにシンポジウムに参加しました.教育支援システムの開発が研究テーマですが,具体的には,教材作成・配布支援,ポートフォリオ活用支援が中心になっています.研究室に配属される前は,むしろプログラミングが不得手だったのですが,サーバ構築やシステム管理などを実際にやっていく上でWeb系プログラミングに興味が持てるようになったようです.研究では,すでに教材として存在しているPDFファイルから自動的にページを抽出し,テキスト入力欄や送信フォームを追加・再統合して,新たなPDFファイルを再構築するWebサービスを考案し,実現しています.

 今後の展望について,星野君に質問したところ,「学生が記述・送信した授業ノートの内容を,自然言語処理の形態素解析・構文解析を用いて,分析することを考えています.ポスター発表の場でも,同じ意見を言ってくれた方がいました」とのことでした.
 また,今回のシンポジウムに参加した感想としては,「ポスターを専用の筒に入れて会場まで持っていくことが印象に残っています.行きも帰りも,スーツケース+ショルダーバッグ+ポスターの筒を一人で持っていたので,満員電車の中や駅の改札を通るときにものすごく苦労しました」,「今回は文字の多いポスターになってしまったので,あまり目立たないと思いました.また発表する機会があった時には,図を多くして見やすいポスターを作ります」と今後の工夫点などを語ってくれました.


 今回のシンポジウムで今年の学会発表は終了ですが,2014年からまた新たに研究活動を展開して行きたいと思います.


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