2006年7月16日日曜日

トップクリエイターによるスペシャル講演

2006年7月16日(日)神奈川工科大学情報学部棟12階メディアホールにて2名のトップクリエイターを招いたスペシャル講演が開かれました。

講師 真島 理一郎(スキージャンプ・ペア製作)
講師 松野 タイゾウ氏(元スクウェアエニックス FF11コンセプトデザイン担当)
司会 深野 暁雄客員助教授(デジタルハリウッド)

今回来ていただいた2名の代表作品をスクリーンに掲げながら それぞれの仕事を基点とした自己紹介から始まった今回のスペシャル講演。華やかで眼に映るグラフィカルな側面だけでなく「クリエイター」としてのポジショニングとモチベーションという本質的な部分についても語っていただけました。

-スキージャンプ・ペア製作者の真島氏-
まず、映し出されたのが真島氏のスキージャンプ・ペアのDVD画像。 「スキージャンプ」といえば近年、長野オリンピックが一番印象的でしょうか。しかし、スクリーンに映し出された「二人で空を舞い演技をする競技」は、 会場にいた参加者の笑いと驚きを終始取りました。ここで真島氏は「実はCGは好きだけど、好きだったわけじゃない」と発言。 そこには「現実世界での表現には制約がつきものであり、つまらない事が多かった」という背景があるようです。 真島氏は千葉大学で空間デザインを専攻。その関係で集合住宅の環境デザインをするDeveloperというCGとは関係のない仕事についていたそうです。しかし、自分が閃いた面白いアイディアも、一企業という性質上、政治的・経済的制約などでいたくつまらない現実的な案に変えなくてはならないのが嫌だったと振り返られました。そんな真島氏の足枷となるような要素がない世界こそがCGだったといいます。

—クリエイターとして次の作品は
今、ようやくスキージャンプ・ペアが一区切りつくと言う真島氏。 それは「スキージャンプ・ペア」の実写版の公開。「それは嘘なんだけど、ドキュメンタリータッチの、そうNHKのプロジェクトXのような。」予告版が放映された館内は今度は静まり、期待感が満ちる感じがありましたが、 当の真島氏はさらに次を見据えているようです。

-FF11 コンセプトデザイン担当の松野氏-
FF11のversion1から担当していたと言う松野氏が持ってきてくれたのは設計図。本来ならば、その設計図からCGの世界を創り、映し出すわけですがその詳細な設計図は、 逆にCGの世界を現実世界に映し出したかのようなものでした。コンセプトデザインという仕事は、その後に続くモデリング工程などに対し 細かい設定が施されたイメージを描き、送り出す仕事。それは時間の許す限り細分化したもので、後の人たちが困らないようにするように心がけなければならない。例えばエントランスの巨大な扉1枚にしても、その動きの方向や扉の老朽度など静的な状況だけでなく、イベントなどの動的な情報も描ききるのも仕事の内だそうです。

深野客員助教授「CGの世界の監督さんってわけだね」
松野氏「そうですね、イベントやアニメーションもこちらで決めて(次の工程に)送り出します」

-CGがまだまだ完全に認められていない時代で-
松野氏が駆け出しだったころはCGが今のようでなかった時代。アミューズメントパークのデザインなどを手がけていたそうですが、やはりここでも現実的要素がおもしとなり、最近勤めていたスクウェアエニックスでは極めて細分化された業務に対して業界最高が求められている。反面、やることをきっちりこなせば非常に自由だった。 そう振り返る松野氏は、現在フリー。生かした経験と培った地盤で、今度は現実世界でアイディアを表現しきりたいと語っていました。

-二人からクリエイターを目指す人に-
異なる環境と人物によって生み出された作品を片手に進められた今回の講演の内容には共通点がありました。最初からCGだけを考え続けていたわけではないこと。 現実世界での制約について疑問を持つこと。その視点から見えるCGの世界の魅力。そして、CGの世界だけに漬かりきらない姿勢。このようなキャリアや知覚はきっと、目指すべきものがある全ての人のアドバイスとなるでしょう。
そんな二人から、会場に向けられた言葉。
真島氏「CG以外の方法にも眼を向けよう。人間の生活とか色々なものにアンテナを張ることが大事。」
「先生を困らせるぐらいじゃないと。デジタルハリウッドではそうだった。」
「あとアナログな手法に長けていることも大事。コミュニケーションとか、モノを見て捉えるだとか、そんな力がデジタルハリウッドの連中はすごかった。」
松野氏「何かひとつを追求すること。広く浅くもいいけど、とにかく何かひとつを。」
「人の10倍から20倍仕事してみるのもいいんじゃないかな、人並だとそれはそこまでということになっちゃうから。」

執筆 情報工学科 3年 高岡 俊介

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