2011年4月4日月曜日

松田先生が日本機械学会フェローに

本学科の松田三知子教授が,社団法人日本機械学会よりフェローの称号を授与されました.これを機に,松田先生にインタビューし,フェローについてや研究について,また,学生への期待についてお聞きしました.

- 松田先生,日本機械学会のフェロー認定,おめでとうございます.また,本日はお忙しい中インタビュイーのお時間をいただきありがとうございます.はじめに日本機械学会フェローの位置づけ,役割などを教えてください.

今回は,機械工学・機械技術分野で特に顕著な貢献をなした正会員とお認めいただき,日本機械学会からフェローの称号をいただきました.

フェローに求められることとしては,学会の規約によると,機械工学の専門家として傑出した技術者であるという自覚をもって,機械工学・技術の発展にさらに寄与すると共に,学会の指導的会員として,学会の諸活動への積極的・能動的な参画を通じて学会の目的の達成に率先して努力することとなっています.ちょっと堅い言い方でわかりにくいですね.要するに心を引き締めてより一層頑張るように,ということだと思っています.

- フェローに認定されるまで,学会ではどのようなお仕事をされてきたのですか?

日本機械学会に入会したのは12年ほど前のことです.おおよそ入会1年後に生産システム部門の運営委員になりました.日本機械学会は,創立110年,総会員数3万8千名を超える日本最大級の学会で,機械に関連する広い学術の分野をカバーしているため,20の専門分野に分けて部門として運営しています.そのひとつである生産システム部門で,年次大会担当,部門講演会担当,広報担当などの仕事をさせていただきまして,その後,2008年度には副部門長,2009年度には部門長を務めさせていただきました.他に学会全体では,学会誌に掲載する論文の校閲(査読)委員や学会賞の審査委員などをさせていただいています.今回は,特に生産システム部門長を務めたことを,高く評価していただいたようです.

- ブログの読者には「情報工学科でなぜ日本機械学会なの?」と思われる方も多いと思います.私もその一人でした.なぜ機械学会なのでしょうか?

機械というとどんなものを思いますか.私達は,日常生活において沢山の機械製品を使っています.例えば,携帯電話,家電製品,バイク,自動車などです.私が専門としているのは,これらの機械製品の設計を支援し,その製品の工場での製造方法を考案することを支援し,さらにその製品を作り出すために工場内の機器を制御するシステム,つまり生産システムです.これらは,一般には生産技術と言われているもので,機械工学の主要な分野のひとつです.現在では,先に述べた製品設計支援,製造工程設計支援,そして工場内機器群の稼動計画や実際の制御などはすべてコンピュータにより行われています.つまり情報処理技術によって実現されています.情報工学科で学ぶプログラミング,データベース,通信工学,組み込みシステム,人工知能,コンピュータグラフィックスなどほぼ全ての科目が,生産システムの構築技術として必要です.昔は,生産技術者と言えば,機械工学の出身者が大半でしたが,今は,高度な情報処理技術の応用が要求されるために情報工学系の出身者が主流となっています.

- なるほど,ITは機械製品の設計・製造を支える基幹技術の一つということですね.そのような技術のなかで,現在,松田研究室で積極的に進めている研究を簡単に教えてください

今一番力を注いで,須藤康裕先生,院生たちと共同で進めている研究テーマは,「自律分散型生産システムの構成」です.平たく言うと,使用者が欲しい製品を1個から省資源省エネルギーに製造するものづくりシステムの構築です.そのためには,工場の機械をどういう順にどう使って製品を作るか計画するためのプランニングシステムと,計画通りにきちんと機器を制御するためのコントロールシステムが必要です.そこで,人工知能技術のひとつであるマルチエージェントシステムの考え方を適用して,コンピュータ上に仮想工場,すなわちデジタルファクトリを構成しようとしています.ここで言うエージェントとは知的ソフトウェアエージェントのことで,自身のいる環境(与えられた仕事)を認識して自身の目標を達成するための行動(求められる作業)を自分で判断し決定し実行できるものです.工場を構成している要素,すなわち,工作機械,組立機械,自動搬送車などの設備類に加えて,製造対象である素材や部品を各々ソフトウェアエージェントとしてコンピュータ上に実装します.複数のエージェントが相互にコミュニケーションし協力しながら,大きな目標達成(製品を完成する)のために動作するシステムをマルチエージェントシステムと呼びます.こうすることにより,正確にコンピュータ上に仮想工場が構築できる上,工場の構成を柔軟に変更できるので,精度の高い製造ラインのシミュレーションができるようになり,プランニング支援や生産システムのコントロールに有効と考えています.

研究成果は,主に日本機械学会や精密工学会,関連の国際会議などで発表しています.2年ほど前には,院生が日本機械学会生産システム部門研究発表講演会で発表して,優秀講演論文表彰を受けました.

- 製造ラインなどを含む生産システム全体を,省資源省エネルギーで効率よく動かすという課題に,松田先生と須藤先生,それに学生が一丸となって取り組んでおられるのですね.このテーマでは,学生さんも学会で表彰されているとのことで,すばらしいと思います.では,情報工学科の学生に期待することをお聞かせください.

“難しそう”,“大変そう”,“苦労しそう”なことほど避けないで全力でチャレンジする気持ちをもってもらいたいと思います.頑張ったのに思う結果がでなくとも構いません.学生時代に全力投球できるものを見つけて本当に頑張った経験が,その後の宝物になります.そんな宝物を情報工学科で見つけてもらえればうれしいです.

- 最後に,フェローとしての意気込みをお願いします.

意気込みというほどではありませんが,フェローの称号に驕ることなく謙虚な姿勢を心がけて,誠意をもって全力で課題に取り組む技術者/研究者でありたいと思います.まだまだですが,いつかその技術者としての後姿で次代を継ぐ方々に語れるようになりたいです.ちょっと難しいかな?

- 常に全力で課題に取り組まれている先生ならではのお言葉だと思います.後進に対して是非大いに語っていただきたいと思います.本日はありがとうございました.

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