2012年3月23日金曜日

情報工学科から11件の研究発表

~情報処理学会第74回全国大会報告~
 平成24年3月6日~8日の日程で、名古屋工業大学(愛知県名古屋市)において、情報処理学会第74回全国大会が開催され、情報工学科の学生より11件の研究発表が行われました(表1参照)。

表1.研究発表者と発表題目
庄司貴哉
カラー手袋を用いた手指の形状認識手法の基本検討
木野純貴
筋電位変化を利用したAndroid端末操作の提案と基本実証
岩井 峻
Android端末による消費エネルギー推定とWebサービスを用いた健康支援システムの提案
野口敦弘
ボタンレスで行うリズム認証手法の提案
上枝俊太
学校における個人情報流出保護を考慮したUSBメモリ管理システムの運用評価
中村孔明
キーボード上に置かれた手指形状画像からの特徴抽出
山本寛悟
Webブラウザにおけるスクロール量ログを用いたオートライフロガーの試作
岡部友紀
情報共有を目的とした防災マップシステムの試作
市村亮太
スマートフォンにおけるWebアクセシビリティの分析と評価
山田健一朗
マルチタッチを用いたキーストローク認証手法の提案
谷村 祐
レポート作成支援機能付き課題提出システムの開発


    会場となった名古屋工業大学(御器所キャンパス)は名古屋駅からおよそ15分という好立地条件に恵まれ,近くには名古屋大学病院や鶴舞公園があり,アーバンでありながらも緑豊かな自然に囲まれたキャンパスでした.

    初日の第1セッションで発表するために,当日は4:20起床で新横浜発に向かい,始発の新幹線に乗りました.前日の準備などで睡眠時間はおよそ3時間.「列車の中でもスライドチェックに専念しました」(本人談).とてもよい天気で春めいた温かい日差しで,絶好の行楽日和でありましたが,いざ学会会場へと急ぎます.初めての学会発表なので緊張するのかと思いきや,「全く問題ありません」(本人談)とのこと.さすがです.夜の食事では,有名な味噌カツ屋さんへ皆で繰り出しました.とてもおいしかったです.

    2日目は,曇り空でとても寒い日でした.前日との寒暖差が大きくて,コートを着ずに出てきてしまい,大変後悔しました.この日も午前と午後のセッションがあり,昼食時に名古屋工業大学のキャンパス周辺にしか足を運べず,名所観光はできませんでした.残念です.夜の食事では,これまた有名な「ひつまぶし」の店へ皆で行きました.連続2日間も贅沢な食事で,グルメを堪能しました.最終日に向けてスタミナをつけてがんばります.

   最終日は,やや晴れ間も見えましたが,初日ほどではなく,午後は曇りがちの天気でした.今日も元気に朝から学会会場へと向かいます.ここまでくればもう少しです.お土産に「ういろう」を買って帰ることを忘れずに,さあラストスパートです.

では,彼らの頑張りを写真で追ってみましょう.



集合写真1

学部4年 庄司さん
学部4年 木野さん


学部4年 岩井さん


集合写真2


学部4年生 山本さん


学部4年生 市村さん


集合写真3


学部4年生 山田さん


大学院1年生 野口さん


大学院1年生 中村さん


集合写真4


学部4年生 岡部さん


どの発表を聴講するか検討中


大学院1年生 上枝さん


学部4年生 谷村さん


夜のお食事はひつまぶし


帰りの新幹線でも語ります
  情報処理学会第74回全国大会で研究発表を行った学生たちとくつろぎの様子



    毎年3月の情報処理学会全国大会では,全国の大学や短大・高専など多数の学生たちが卒業研究や修士論文研究の成果を発表します.手法提案,実験分析・評価,システム開発,適用事例報告など,いろいろなスタイルの研究があります.研究テーマは8つの大分類があり,それぞれ,1.アーキテクチャ,2.ソフトウェア科学・工学,3.データベースとメディア,4.人工知能と認知科学,5. ネットワーク,6. セキュリティ,7. インタフェース,8.コンピュータと人間社会,となっています.

   情報処理学会では,学生による研究発表のためのセッション(発表テーマごとに分けたグループ)を設けており,多数の研究発表が行われます.今回の第74回全国大会では,一般セッションは8会場,学生セッションは25会場もあり,各会場3日間で6セッション,学生セッションでは,1セッションあたり7~10件ほどの発表件数があります.全部でおよそ何件の発表があるのかをざっと計算してみると,25(会場)×6(セッション)×8(件)=1200(件)にものぼります!さすが,全国大会ですね.

   学生セッションでは,1件あたりの発表時間は12分,質疑応答時間は3分となっており,1件当たり合計15分間の持ち時間があります.発表10件のセッションでは,休憩なしで2時間30分の長さがあります.結構な長丁場だと思いませんか?

   セッションには座長と呼ばれる司会進行役がおり,大学教員や企業の研究者が努めます.情報工学科や情報学部の先生方も座長として参加しておりました.座長は,発表者の紹介だけでなく,各発表の質疑応答の際に,教育的配慮を踏まえた適切な質問や優しいコメント,時には鋭いツッコミなどを適宜織り交ぜながら,活発な議論がなされるようにセッションを進行していきます.こうした教育的指導は,これからも多くの学生が大学や企業で研究・開発に携わる上で大切な事柄をいろいろと学んでほしいと考えているからこそなされるものだと言えます.

   今回の発表者の皆さんにアンケートに答えてもらいました(ほぼそのまま掲載いたします).彼らがどこまで成長したのかを見てみましょう(表2参照).


 
表2.発表者の意見・感想
a) 自分の発表で良かった点は何ですか?
[大学院1年生]
l  顔を上げて発表ができたこと.聴講者の様子が確認でき,序盤は興味を引くことができたと思う.
l  小声にならずに話しきることができた点
l  12分ぴったりで終わることが出来ました。以前よりも聴講者のほうを向いて話すことができたと思います。
[学部生4年生]
l  質疑応答をなんとか受け答えできた
l  自信が持てないでいましたが,発表中は発表に集中することができました.その点においては良かったと思っています.
l  とくにありません.
l  発表時間をうまく調節し、12分丁度に収めることができた。
l  練習ではうまくできなかったが本番では12分ピッタリに終えることができました!!
l  事前に練習を重ね,発表に詰まることなく発表時間内に終われた.PCの画面を見ずに操作台の前に立ち少しばかりであるがアイ・コンタクトに気を配る事ができた.
b) 他人の発表で見習いたい点は何ですか?
[大学院1年生]
l  スライドの構成と分かりやすい図.背景から目的までの流れを違和感なく,自然に発表できると聴講者の理解が進むと感じた.また,図は多く取り入れるべきだと思う.
l  ユーモア
l  スクリーンを見ずに発表することです。図やアニメーションの使い方が上手いので、文章を少なくし、図を増やしたスライドを作っていきます。重要な部分、話を聞いてもらいたい部分を説明するときは間を開け、注目してもらうことが必要だと感じました。
[学部生4年生]
l  内容の濃さとスライド資料(アニメーション、魅せ方)の質。
l  図やアニメーションの使い方.説明する部分や説明の仕方
l  発表そのものが上手。聞いている側がもっと聞きたくなるような発表が多くあった。
l  パワーポイントの作り方.僕の発表でできるかどうかは分からないが、デモがあるとすごくわかりやすいと感じた。
l  大きく2点,スライドの作り方と発表の仕方になります.スライドの作り方は,流れ,スライド一枚の情報量,図,アニメーションなどのタイミングなど,かなり参考になりました.発表の仕方については,ただ説明する,というのではなく,聴いている側に伝えようとする動作(スクリーン上のスライドを手で指すなど),見習いたいと思いました.
l  スライドの作り方.アニメーションの使い方が効果的で,重要な点の強調や読みやすさに配慮されていたためです.
l  声の大きさ、テンポやアイコンタクト。
l  聴講者の方をしっかり見て発表しているところ.話し方,スライドの色の付け方.
l  読み上げる声の大きさや早口にならず落ち着いた発表をしている点.手や指し棒を使って動きのある発表をしている点
c) 他人の発表と自分の発表の違いは何ですか?
[大学院1年生]
l  言葉づかい.一般セッションにおける企業の方の発表で,言葉づかいが非常に丁寧であったので,その点が大きく違うと感じた.それと,やはり説明する内容を短く(省略)してしまい,誤解を与える内容になっていることが発表練習の時点でもその通りであったが,質疑応答でも明らかであった.
l  動画などの動きが、自分の発表にはない
l  研究の目的や背景、提案手法の工夫点など話す内容によって重要な部分が違うと思います。それぞれの場合で聴講者に分かってもらいたい箇所を説明する際はより丁寧に行うべきだと感じました。
[学部生4年生]
l  内容の濃さとスライド資料の質。
l  図やアニメーションの使い方.説明する部分や説明の仕方
l  求められているかどうかは分からないが、発表の仕方に独自性がないと感じた。型にとらわれた発表とまでは言わないが、もう少しうまくなったら自由な発表ができるようになると思う。
l  主に自分が良いなと思った人との比較になりますが,落ち着きや,適度な間,質疑の際の余裕など他人の発表は優れていると思いました.そういった点が優れていると,聞いている側としても内容に集中できると思います.
l  多くの人はシステムを必要とした背景やシステムがもたらした結果について重点的に話していたのに対し,自分の発表ではシステムの中身に重きを置いて話していました.
l  自分のスライドは文字が多くみづらかったかもしれない。
l  落着き具合.
l  発表中に詰まっても落ち着いて発表を続けていたこと.読み上げるだけでなく,指し棒を使って今どこを説明しているのか注目すべき点はどこなのか注目してもらうこと.
d) 自分の発表で見直すべき点は何ですか?
[大学院1年生]
l  説明の簡潔さを求めるとともに,誤解を与えないような発表内容にしたい.
l  発表時間がやや長くなったので、削る必要がある
l  スライドの作りこみと、スクリーンを見てしまうことです。
[学部生4年生]
l  研究は、1.アイデア 2.検証 の2要素があるが、そのどちらもおろそかにしてはいけない。アイデアが陳腐であれば、いかに素晴らしい検証をしてもまともな成果を得ることはできない。逆に、アイデアが素晴らしくても、検証が雑であれば、聴講者は半信半疑にならざるを得ない。つまり、検証にもっと時間をかければよかったと思いました。
l  図やアニメーションの使い方.スライドの構成や説明する内容の選定.
l  原稿をできる限り覚えて前を見て発表する.上手なパワーポイントの作り方を検討.
l  b)c)で挙げた点について,今後見直していきたいです.そのためには,短期的にがんばるより,長期的にじっくり考えがんばる方が良いのかなと思っています.
l  スライドに書かなかった目的,背景の洗い出しが不十分でした.
l  ほぼスライドの文字を読むかたちになっていた。
l  緊張して早口になってしまった.スクリーンを見てそれを読んでしまうところ.
l  声の大きさが小さく後ろの席まで声が届いていなかった.指し棒の使用回数が少なく読み上げるだけの発表になっていた.
e) 研究の進め方のコツは何ですか?
[大学院1年生]
l  常に問題意識を持つこと.そこから,新しいアイデアや研究のネタが思いつく.一番,刺激を受けるのは,やはり学会発表!
l  とりあえず動くこと
l  わからないことを放置せずに、調べて質問することだと思います。特に研究の進め方自体がわからない場合は先輩や先生にどんどん聞いたほうが良いです。
[学部生4年生]
l  1.焦点をしぼったテーマにすること
 研究に費やすことのできる時間は短い。また、学会で発表する場合においても持ち時間、予稿の紙幅ともに少ない。また、焦点をしぼり得られる端的な結論の方が、聴講者をひきつけ、その分野においても、よりインパクトを与えることができる。よって、テーマ名は、焦点をしぼりにしぼって、ごく限られたものにするのが良い。もし、そうでない(漠然としている・抽象的である・テーマ名のみで結論・成果を予測できない)場合は、より絞り込むほうが良い。
2.自分のテーマの属する分野について熟知すること
 自分のテーマと似た内容の先行研究は存在しないのか、といった簡単なことや、検証方法や、研究を進める方向を正しく決定するためにも、自分のテーマの属する分野について、熟知してから研究を始めるのが良い。研究に手を付けるのが夏休み以降にずれこむとしても、自分のテーマの属する分野の常識、トレンド、論文を熟知しないで進めるのは良くはない。テーマを決定した段階で、属する分野を調べ、その研究会・論文をあたるべきである。
l  遊び目的でもなんでもいいから研究室に来ること。わからないことは素直に聞くこと。やるときはやること。
l  内容,結果を考えつつ,次に何をしたらいいかがわかるように作業を進めていくのがいいのかなと思います.
l  研究室に来て少しだけでも研究に関する作業をすることです.
l  研究室によく来てよく相談すること。
l  なるべく研究室にくる.
l  全体のイメージを作りそれに向け今何をすべきなのか考え行動すること.やるべき事が多くても一つ一つ潰して進めていくこと.研究室に毎日来ること.
f) 後輩へのアドバイスをお願いします
[大学院1年生]
l  より良い卒業研究にするために,学会発表をして,研究のクオリティを上げよう!
l  一人で悩むくらいなら、先生に相談をすることが大事
l  研究室のメンバーと話すことが大切です。先輩や先生にも「自分から」話しかけて下さい。
[学部生4年生]
l  e)のコツ2点を守れば、学会へ数回発表いけるレベルの研究ができると思う。また、私観ではありますが、学会では、研究者の最新の成果を聴講することで、大いに刺激になる。発表できる最低限の内容を素早くそろえれば、複数回学会に行くことができると思うので、それをお勧めしたいと思います。
l  早いうちから少しずつでもやる
l  学会発表は良い刺激になる。学部生のうちにもっと研究を進めて他の学会発表にもいければよかったなと後悔。後輩達も是非参加してみてください。絶対自分のためになると思います。
l  まずやりたいことを探しましょう.なければとりあえず何かやってみることもアリだと思います.それについて少しでもいいので考える時間をつくりましょう.いつの間にか楽しくなってきます.
l  研究テーマは早く決めたほうがいいと思います.一年が経つのはかなり早いので,作業時間の確保は大切です.
l  研究室に毎日来てればうまくいきます。
l  なるべく研究室に来よう!わからないことはガンガン質問する!あとはとにかくやってみる!
l  思った通りに出来なくて辛い時もあると思いますが,一つの研究をやってその成果を発表したということは,大きな自信になります最後まで諦めず頑張ってください.
g) その他,感想など
[大学院1年生]
l  前回でも感じたことであるが,実際にモノがあると説得力があり強いと感じた.今後の課題は,実際に動くものを作ることが更なる聴講者の理解や興味を引くことに繋がるのではないかと思った.
l  当日入りじゃなくて、前日入りの方が余裕があってよかったかもしれない
l  名古屋グルメを堪能できてよかったです。他の発表は発表方法(スライドの構成や話し方)も研究内容も学ぶことが多かったです。
[学部生4年生]
l  「自分のテーマの研究者」として、やっとスタート地点が見えてきたかな、と思っています。学会へ自分が満足のできる成果を発表できたときに、やっとスタート地点なのかなと思います。これから先、情報工学を究める、という立場に、立つ機会がどれだけあるのかわかりませんが、実務に忙殺されるだけでなく、1年に1回ぐらいは学会へ聴講しに行きたいと思っています。
l  体調が優れなくて大変だった
l  3日間お疲れ様でした。初めての学会発表で分からないことが多く、発表が終わるまで不安でしたが、先生、先輩方のおかげでなんとか乗り切ることができました。ありがとうございます。今回参加したことで学会発表の流れを知ることができました。今回の反省を生かし、今後の学会発表にも望みたいと思います。他の研究も聞きましたが、参考になることが多かったです。良い刺激になりました。今回はあまり質問できなかったので、次回以降は質問も多くできればいいなと思います。
l  今回の学会発表では,たくさんの刺激を受けました.情報技術の魅力をとても感じました.また,先輩方との交流も多くあり,今後の生活が有意義なものになると思い,ワクワクしています.今行っている研究に限らず,情報技術の楽しさを感じられるようにやりたいこと(Linux面白いなと思い,いじって遊ぶ程度ではなくいつか本格的に勉強していきたいなと思っていました)もさっそくやっていきたいと思うことができました.いい刺激を受け,勉強になり,おいしいものも食べられたので本当に行ってよかったと思います.
l  他大学の発表も聞けたので,勉強になることが多くありました.勉強だけでなく美味しい料理も食べることができたので,とても充実した3日間を過ごすことが出来ました.学会発表に至るまでの過程や学会発表中に学んだことを,これからに活かしていきたいと思います.
l  最初で最後の学会発表だと思いますが,大変貴重な経験をすることができました.
l  ご指導を頂いた指導教員並びに,ご意見やアドバイスを頂いた情報学部の先生に深くお礼申し上げます.
 
  学会に参加して発表し,他大学の学生や企業の研究者との交流を行うことが,研究を進める上で,良質で重要な刺激となっているようです.モチベーションを高め,情報工学への興味や関心をより深めるためにも学会への参加が重要だと言えるでしょう.今回の発表者には,学部を卒業して企業で働く者,また,大学院へ進学して新たな研究をスタートする者もいます.彼らが学んだことが,今後,活かせるようにと願っております.(一指導教員より)


参考URL
・情報処理学会第74回全国大会:http://www.ipsj.or.jp/10jigyo/taikai/74kai/index.html

1 件のコメント:

  1. こころを大切にする教員2012年3月23日 9:30

    ベリグーッドな記事ですね。特に、後半の「発表者の意見・感想」です。設問もよいですし、答えも学生らしさがでており、後輩の学生諸君にも参考になる点が多いと思います。続け、3年生、4年生諸君!

    返信削除