平成25年3月6日~8日の日程で,東北大学川内キャンパス(宮城県仙台市)において情報処理学会第75回全国大会が開催され,情報工学科の学部生・大学院生より13件の研究発表が行われました(表1参照).
情報工学科では,3月の学会シーズンに向けて,2月までの卒論や修論で行ってきた研究成果を総括し,情報処理学会や電子情報通信学会など,情報工学に関連する各学会で発表するのが恒例になっております.大学院に進学する者,修了・卒業して社会に出る者,人さまざまですが,卒業式間際までの学生の活躍をご覧ください.
表1.研究発表者と発表題目
中瀬裕多
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車載スマートフォンにおけるプローブデータ圧縮方式の評価
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川本瑞己
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学生の行動モデルを活用した通学支援システムの端末アプリ実装と評価
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太田隆聡
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動画データを対象とした色頻度の変化傾向に基づいた動画データベース選択方式
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杉田 駿
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人工市場を用いた株式市場における委託保証金の増減による影響分析
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西田滉季
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レポート提出を確実にするリマインドアプリにおける評価と考察
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仲濱正大
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入院早期における在院日数予測手法の検討
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谷村 祐
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課題提出を支援するリマインドシステムにおけるアドバイス機能の検討
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山田健一朗
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スマートフォンにおけるゲームパッドを意識したキーストローク認証手法
-フリック操作の対応-
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市村亮太
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自己組織化マップを用いたスマートフォンにおけるリズム認証手法
-楽曲の主旋律を用いたリズム特徴量抽出-
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大懸由佳
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Webにおける記事と広告の表示構成と可読性の検討
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平澤 翼
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自己組織化マップを用いた音声認証 -チューニングによる認証精度の向上-
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中村孔明
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手指形状を用いたバイオメトリクス認証手法の評価
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上枝俊太
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学校向けUSBメモリ貸出システムにおける不用意な情報持ち出しへの対策強化
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会場となった東北大学川内キャンパスは仙台駅からバスでおよそ15分という場所にあります.仙台市のホームページにある「仙台市 杜の都 緑の名所100選」においても紹介されており,緑豊かな小高い丘の上にあります.窓の車窓からは,並木道の向こうの窪地に雪がまだ少し残っているのが見えました.春には,キャンパス内の至るところに植えられたサクラが満開になるそうです.
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仙台駅 |
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東北大学川内キャンパス |
初めての学会発表に臨む卒研生も,研究成果を発表する姿は成長を感じさせてくれます.
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初めての学会発表 太田さん(鷹野研) |
今回の学会では,大学院博士前期課程1年の山田健一朗さんが学生奨励賞を受賞しました.この賞は,学生の研究内容やプレゼンテーション(発表)のアクティビティの高さを奨励する目的で,各学生セッションの座長さんが該当者1名を選び,セッション終了時点で賞を授与するものです.
本学科では初めての学生奨励賞の受賞となりました.山田さんは,「昨年度は情報処理学会推奨卒業論文として認定をいただき,今年も奨励賞をいただけて大変光栄です.今後も頑張って研究を続けたいと思います」と意気込みを語ってくれました.
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学生奨励賞の山田さん(納富研) |
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くつろぎのひと時も必要 |
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最終日の発表を終えてパチリ |
それぞれの研究概要については,学会の全国大会のページから参照することができますので,ここでは割愛しましょう.今回の発表者の皆さんにアンケートに答えてもらいました.学生さんのホンネも垣間見えますので,ほぼそのまま掲載いたします(表2参照).
表2.発表者の意見・感想
a) 今回の発表を100点満点で採点すると何点ですか?また,その理由は?
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[大学院生]
- 70点.セリフを噛みまくって,発表時間をオーバーしてしまったため.
- 50点.スライドを何度も修正していて,発表練習を満足に行えなかったから.
- 70+10点.言い訳になってしまいますが,前日に発表スライドを調整したため,発表練習の時間が足りなく,本番で余裕のある発表をできませんでした(発表時間など).反省点も多々あるため,発表は70点としました.ですが,努力の甲斐あって学生奨励賞をいただくことができました.その分の点数を10点上乗せしたいと思います.
- 90点.よい結果が得られたので,やったことをわかりやすく伝えようと発表スライドには力をいれた.質疑時間が短かったこともあり,伝えたいことを伝えきれなかった感が否めないので10点マイナス.
- 70点です.発表や質疑応答についてはスムーズにできたと思うのでよかったと思います.しかし,発表のプレゼン資料やテーマ設定を工夫して,より興味を持ってもらえるような発表をしていきたいと思います.
[学部4年生]
- 70点です.個人的には話すペースと発声についてはそれほど問題なかったように思いますし,時間も守れましたが,最初に挿し棒の使い方を間違えてもたついてしまったこと,何回か話している途中でつっかえてしまったこと,質疑応答の受け答え方が多少難ありだったこと等を差し引きました.
- 50点.理由としてサーバ側の機能の部分で発表した部分の想定質問を考えていたのですが実際に発表でその部分について質問された際にうまく返答を行うことができなかったので.
- 60点.発表原稿を覚えきれていない部分があってノートPCを見続けてしまいました.発表時間は決められた通りに終えられたので,その点に関しては良かったと思っています.
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b) 今回の学会発表で印象に残ったことは何ですか?
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[大学院]
- 後輩が奨励賞を受賞したこと
- 様々なジャンルの研究発表を見たこと.
- 牛タンおいしい.
- とあるセッションで,時間を延長してでもしっかりと研究内容を理解してくれ,キツめではあったが適格なアドバイスをしてくれる熱心な座長がいたこと.仙台の女の子の顔.宮城県なのにくまモンがいたこと.
- 一般セッションで大学教授が検討,開発をしている教育支援システムの発表を聴いて,実際に講義を行っている立場の人であるので,背景や目的が納得しやすいと感じたことが印象に残りました.
[学部4年生]
- 学会発表は初めてだったのですが,多種多様な研究テーマがあり聞いていて興味深かったです.自分が気付かなかった視点の考え等が聞けてとても有意義でした.
- 座長が発表者の研究にとても関心を持ったようで,通常3分の質問時間を大幅に超え座長と発表者が討論を交わしていたこと.また,そのセッションで,座長が情報処理学会の会員でないと奨励賞がもらえないという制度が不満のようで個人的に情報処理学会の学会員でない発表者に記念品を送っていたこと.
- 質疑がとても長いセッションがあったこと.本来3分間であるはずの質疑応答が8分以上行われていました.座長の先生が納得できる回答が得られるまで終わらないので,緊張感が漂っていました.
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c) 今回の学会発表で学んだことや反省点はありますか?
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[大学院生]
- しおり作成の際,下調べやタイムテーブルの掲載をきっちりやっておくべきだった.
- 他の講演者の発表を見ることで,どのような発表が良いか参考になりました.
- 発表練習は十分すぎるほどやる.
- よい結果,面白い結果がでたというだけでなく,もうひとひねり,先進的な情報技術を取り入れていくなどして研究の中に面白さを込める必要性を感じた.
- 今回の発表では,スライドの作り方や発表者の話し方で,発表の面白さが変わることを改めて学びました.次回の発表では,より工夫してスライドの作成,発表を行いたいと思いました.
[学部4年生]
- 反省点といたしまして,スケジュール管理が上手くできていなかった為,直前までバタついてしまいました.今後はもっとしっかりとした,先のことを考えたスケジュール管理を心掛けようと思います.
- システムについて十分な評価実験を行うことができなかったため,発表の説得力が不足したいたと感じたので,十分に評価実験を行った上で発表を行うのが重要だと感じた.
- 様々な大学から来た学生の研究成果に対する評価を聞く事が出来るので,ものの見方が広がりました.
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d) 学会発表することのメリットやデメリットを教えてください.
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[大学院生]
〔メリット〕
- どうすれば相手に分かりやすく情報を伝えられるのかを考えなくてはならないため,プレゼンテーション能力が確実に向上する.
- 学会発表を行うことで,卒論や修論の締切前に余裕を持って研究が進められる.
- 実験や原稿作成,発表は大変ですが,いろいろな場所へ行けます.他人の発表を見ることは,うまい発表でも下手な発表でも勉強になりますし,良い刺激にもなります.
- 旅行ができる.おみやげを買う.これだけで親孝行になる.皆と一緒に行くことでより親交は深まる.様々な研究に触れ,研究のモチベーションはまず間違いなく上昇する.
- 自分が行ってきたことに対しての意見や感想を様々な人からいただけることや,他の人の発表で刺激を得られることだと思います.
〔デメリット〕
- 大学に提出する論文と学会に提出する原稿の作成の並列処理が大変.
- 原稿提出締切という単語が頭の中に存在し続けること.
- 原稿締め切り前はおそらくプチデスマーチ.ニキビと口内炎ができる.ある程度の時間はとられるので,ほかのタスクとの両立が難しくなる.しかし,それくらいこなしてこそ大人だ!と個人的には思っている.達成感に繋がるのである意味ではメリットになり得る.
- 発表しない人に比べれば忙しい時期ができてしまうことだと思います.
[学部生4年生]
〔メリット〕
- 多数ありますが,中でも,多くの人に自分の発表を見てもらい,質疑応答にて発表についての意見をもらうことで,より研究を完成度の高いものにできることだと思います.
- 食費以外はタダでいろいろなところに旅行に行ける,他の研究を知ることで自分の研究に応用することができる.
- 自分の発表を学外の方に評価してもらうことが出来ます.指摘された問題点を改善すれば研究内容の向上にも繋がると思います.
〔デメリット〕
- 今回の学会発表につきましては感じませんでした.
- エントリ,原稿提出,発表と期日が決められたタスクが強制的に設定されるので,他のタスクに影響がでる.特に12月から1月は卒研生には卒論の〆切も近づいているので大変だと思う.
- 移動による疲労.食いすぎによる体重増加.
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e) 後輩へのアドバイスをお願いします.
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[大学院生]
- 学会発表というとすごく重く感じられますが,学生発表はそこまでつらいものではないので,恐れずにチャレンジしてみてください.
- 学会発表は外部の方から意見を伺うことができる貴重な機会なので,積極的に参加した方が良いと思います.
- 来年度卒研生の方は是非学会発表目指して研究を頑張ってください.学会発表は勉強になりますし,自信にもなります.敷居が高いと思われるかもしれませんが,そうでもありませんよ.
- 僕らは皆さんと仲良しになりたいです!研究室には,研究しに行く,という固い意識ではなく,遊びに行く,という感覚でOKです.仲良くなってしまえば,コミュニケーションが活発になり,しょうもない会話をしていたつもりが研究を進めるためのディスカッションになっていたりすることもあるでしょう.新卒研生にはわからないことを大学院生は知っています.4年生という大学生活最後の1年を楽しむためにも,僕らと仲良しになりましょう!まずはそれからです.
- 大学院への進学を考えている人は,積極的に参加して欲しいと思います.また,進学を考えていない人でも,学会での発表は良い経験になると思うので,機会があれば積極的に参加してみてください.
[学部4年生]
- 学会発表は前準備や当日の発表等全て含め大変ですが,その分経験や意見等得るものもとても大きい物です.機会に恵まれれば是非参加することをお勧めします.
- 4-5月の間は就活もあり研究もなにをすればいいのか分からないため研究室に来づらいと思うかもしれませんが,この期間に研究テーマが決まらないと後のスケジュールがどんどん遅れていくと思うので,時間を作って研究室にきて先生や院生の先輩と話す時間を作るのが重要だと思います.あと就活は大事だとは思いますが,そのせいで卒研が疎かになってしまうと,頑張って内定をもらっても卒業できなければ意味がないので,就活を言い訳にせずに卒研を進めていくことが重要だと思います.
- まずは1時間でもいいので毎日(研究に)集中する時間を持つこと.大学に来て,多くの人とコミュニケーションをとること.
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f) その他,感想など
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[大学院生]
- 先生,先輩方のおかげで賞をいただくことができました.ありがとうございます.
- 一年間大学院生として過ごし,一年前に比べ大きく成長できたと感じています.これも,先生,先輩方,この研究室の過ごしやすい環境あってこそだと思います.あと一年,どこまで成長できるか.自分とのたたかいです.
[学部4年生]
- このたびは,貴重な経験をいただき,本当にありがとうございました.今回得た経験を今後活かし,一人の社会人として活躍していきたいです.
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3月の学会に参加すると,他大学の学生さんの発表に数多く触れることができます.予稿集原稿の執筆の仕方や高品位のスライドの作り方,また誰もが理解し易い説明の仕方や説得力ある論証方法など,普段自分たちが行っているものとは違う世界を実感できるかも知れません.
本学科の学生も,さらにモチベーションを高めて,積極的に学会に参加して欲しいと思います.3月の学会では,学生セッションを設けている場合が多いので,卒業論文や修士論文のための研究成果のまとめとして参加みてはいかがでしょう.
情報処理学会や電子情報通信学会の全国大会・総合大会などは,学生さんの聴講は無料です.学会が近隣で開催されるときは,ぜひ参加してみましょう.これから学会発表してみたいという人にはオススメです!(一指導教員より)
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