2017年3月30日木曜日

「2017年信学会総合大会の出張報告(聴講バージョン)」

 学生が発表するときは、基本と言うか必ず指導教員が引率というか同行するものなのですが、今回は所要があり行けませんでした。学生の発表が土曜日だから、というわけではないので、念のため。代わりに、発表する学部生の指導をしている院生に、私の代わりに同行してもらいました。要するに、かっこよく言うと私の名代、かっこ悪くいうとカプセル怪獣(ちょっと理解が難しいですね)ということになります。ミッションとして、学部生の支援だけではなく、動向調査や他の大学の動向もお願いしました。これは、その報告です。合格点を付与していいでしょうか?

 とくに最後の一段落は、これから研究室配属となる本学の学生にぜひとも読んでほしい先輩からの熱い思いがこもったメッセージです。
 
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情報工学専攻2年の金田です。

学部生の学会発表の監督兼動向調査員として、金田・柴田・海老原が本学会の各セッションで聴講を行う、予定でしたが、急遽インフルエンザにかかるハプニングにより、柴田君を除いての聴講となりました。

学会発表の感想やその他報告は学部生の記事にお任せして、本稿は動向調査のミッションを請け負った院生組の出張報告となります。

コンセプトとしては、それぞれが興味のある分野のセッションで聴講を行い、各分野のトレンドや、本学学生との対比的な視点から自由に感想を述べます。

多少技術用語を交えて所感を述べている部分がありますが、ご容赦ください。

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金田 - 聴講したセッション:人工知能と最適化の理論と応用

情報分野では、今最もトレンドと言える「人工知能」に関するセッションを聴講しました。

年に2回ある信学会(ソサイエティ大会, 総合大会)では必ず5G(5世代ネットワーク)のセッションを聴講するようにしていましたが、あいにく名古屋に向かう前日に終わっていたようだったので、今回は人工知能へ歩み寄ってみました。

本セッションの大まかな流れは、以下のように構成されていました。

・前半:アルゴリズム・理論(最適化問題の解法など)
・後半:実空間への適用・評価(ロボットアームからドローンまで)

聴講の感想としては、まず人工知能の分野における飛躍的なブレイクスルーに深層学習(ディープ・ラーニング)は欠かせないと改めて感じました。

身近な例だと、ロボットアームにより自動的な商品の取り出しを競うアマゾン・ピッキング・チャレンジが有名ですが、深層学習を用いないチームはまず上位に食い込むことが不可能な事実があるようです。

また、会場の広い講義室がほぼ埋まるほど聴講者が多く、前のめりな姿勢の聴講者もいました。このことが、今後人工知能に携わる・或いは学習する人口の増加と、更なる発展への期待を示しているように思いました。

機械学習が適用できる空間には以下があり、特に、後者に大きな課題を抱えていることが一発表者により示されていました。

・サイバースペース(電子的な処理に限定されるもの:画像処理, 金融株の予測など)
・現実空間(実環境からの影響を考慮したロボットの制御)

現実空間における機械学習の適用では、以下のような難しさがあると、簡潔に述べられていました。

・サイバースペースに比べて1回の学習で消費する時間が圧倒的に多い(学習回数に限度)
・現実の環境は常に変化が生じており、パラメータが多すぎる(状態爆発)

如何にして少ない学習回数で所望の動作を正確に行えるようにするかが、現実空間への適用における、今直面している課題のように思いました。

聴講とは少しずれますが、シンガポールではAIの導入により、交通や人の混雑を緩和する実証実験が始まっているという情報を、少し前のテレビ番組で耳にした記憶があります。

AIが人の生活を(飛躍的とまで言えるかは疑問が残りますが)便利に、豊かにする時代は、すぐそこまで来ているように思います。

加えて、初学者が機械学習について学ぶための足掛かり・敷居は、どんどん低くなっているように感じます。

現に、Python(プログラミング言語)による深層学習を最近素人ながら始めてみましたが、図解が多かったり、導入から応用までかみ砕いて説明されている教材が豊富で、学生が楽しみながら工学的なエッセンスが学べるチャンスが転がっていることを実感させられます。

「勉強する意欲はあるけど、何から始めれば良いか迷っている→迷ったら機械学習」なんていうのも、アリなんじゃないでしょうか。※極端な個人的感想です

まとまりに欠けますが、以上になります。

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海老原 - 聴講したセッション:パターン認識・メディア理解

私は初めて電子情報通信学会総合大会に参加しました。会場の名城大学は駅からすぐの場所でアクセスの良い立地でした。今回、私が聴講した中で、パターン認識・メディア理解のセッションについて報告を行います。聴講したセッション内のテーマとしては、下記に挙げるものが目立ちました。

・文字認識
・人体動作検出、認識
・車両用の歩行者検出

本セッション内では、画像を用いた研究が多く見受けられました。特に頻出したワードとして、”SVM(Support Vector Machine)””HOG(Histograms of Oriented Gradients)特徴量がありました。SVMHOGの組み合わせは一般的なようで、有名な画像処理ライブラリにも含まれているようです。Alpha Goを含め、Deep Learningが世間を騒がせていますが、SVMにはまだまだ活躍の場面があると感じました。

また今回は他大学・企業と本学との比較からの観点で感想を書くというテーマを貰っています。直接的な比較ではありませんが、ここからは今回の学会に限らず、私自身が研究活動を行ってきた中で、他大学や企業の方の発表を聞いて素晴らしいと感じた代表的な点を示します。

・周辺状況、関連研究の知識
説得力のある発表では、その研究の立ち位置が明確であると感じます。例えば、社会の動向を踏まえた研究背景や類似研究との比較評価によって、研究をやる意義やその研究の強みを明らかにできると思います。そのため関連研究も含めた周辺状況の知識を深めることは、発表に説得力を持たせることにつながると思っています。素晴らしいと感じた発表では、この点について入念に情報収集を行っており、発表内容はもちろん質疑応答でも活用しているという印象があります。

・実環境での実験
基礎実験としてシミュレーションでの確認も必要とは思いますが、さらに実環境でも実験を行った結果が示されているとより説得力を感じます。モデルの作り方にもよるとは思いますが、現実世界では様々な要因が折り重なって、結果に予想外の影響を与えることもあるかと思います。実際の環境下において評価を行うことが、研究の有効性を示す強い根拠となることと思います。私が素晴らしいと感じた発表では、実環境での結果も示してあることが多かったように思います。

・堂々とした発表
やはり堂々とした発表を行うことが、最も基本であり、かつ難しい点であると思います。立派な発表を行う方は、パソコンや発表資料よりも聴衆の方に向かっているという印象があります。センスの有無も関係するとは思いますが、そういう発表のためには、まずは練習時間をたくさん確保することが重要だと思います。練習の時間がとれなかったのだと思いますが、企業または教授の方でも聞きづらい発表があります。学生は優先順位の付け方によって練習したいだけできますので、しっかり練習しておくことが必要と思います。

以上、勝手な感想を述べました。

本学には商業・工業高校出身の学生も多く在籍しています。私も商業出身ですが、そういう学生さんこそ、学会への参加を目標にしてほしいと思います。就職や専門学校ではなく大学を選んだからには、大学でしか得られない経験に最も価値があると思います。論文執筆から学会発表までのプロセスを経て、得ることはたくさんあります。本学の学生のみなさんには、自分の成長のために、学外での発表を目標に取り組んでもらえたらと思います。

 

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