2015年11月8日日曜日

(続)FIT2015発表報告

FIT2015 14回情報科学技術フォーラム(平成27915()17(),愛媛大学城北キャンパスにて開催)における研究発表報告の続編です.この記事では,情報工学専攻博士前期課程の学生4名による発表の様子を紹介します.また,このうち2名がFIT奨励賞を受賞しました.
以下,関連の発表風景と共に,今回の発表内容に関するアンケートへの回答について示します.
  

大学院2年 星野裕樹さん
発表題目:キーボード操作の時系列情報を活用したコーディング学習支援手法の提案
FIT奨励賞(2015)受賞
1.あなたの研究テーマを分かり易く説明してください
動画形式などで作成されたプログラミング教材は,専用ソフトのインストールが必要であったり,動画形式によるプログラムの見づらさ,プログラムをテキストデータとして扱えないなど,いくつか欠点があります.そこで本研究では,Webブラウザ上でコーディング時のキーボード操作と時間情報の記録・再生ができ,Web上でコーディング技術を学ぶことのできる教育コンテンツの開発を行いました.

2.得られた研究成果を紹介してください
学生によるアンケートでは,再生時の見易さ,およびコーディング動作の再現度が十分であることが確認できました.動画形式の教材とは違い,ブラウザ上で記録されたデータを基に文字挿入やキャレット移動などが実行されるため,目の前で実際に打ち込まれているのを実感することができます.

3.研究の進め方のコツを教えてください
人によって様々な方法があると思いますが,私の場合は同じことを続けないことです.一つのことに集中していて,どこかで上手く行かずに止まってしまった際,そのまま諦めずに進もうと思うことも大事ですが,結果が出なければ評価してくれる人は少ないでしょう.そういった時は,普段はあまり行わないことをしてみたり,新しいことを始めることで,新たな閃きが出やすくなるのではないかと思います.そのために私は,研究テーマを1つに絞って行うのではなく,学習支援とセキュリティで複数のテーマを入れ替わりに行っています.複数行うということはそれだけ負担も増えますが,気がつけば自分自身の技術力が飛躍的に向上していて,それが普通に思えてしまいます.卒研を1週間で終わらせることも夢ではありませんよ.諦めずに続けて,慣れることが重要です!!

4.今後の展開について教えてください
通常であれば,学生に提出させたプログラム課題は完成したものであるため,作成過程を見ることができません.しかし,本研究のシステムで記録すれば,全ての操作記録を確認することができます.そのため,課題のコピーを防ぐなど,採点時における教員の手助けになるのではないかと考えています.現在は,記録したコーディングデータから,その人のコーディングの特徴を抽出できる機能を開発中です.これが完成することで,学習支援の幅が広がり,面白いことができると思います.

5.何か感想がありましたらどうぞ
研究過程で作成したシステムは,いくつかの授業で使用されていますが,まだまだ学習支援に関する問題点は多く存在しています.残りの学生期間で出来るだけ多くの作品を残せるように頑張りたいと思います.


大学院1年 河合博之さん
発表題目「画像と連想語を用いた音声認証システムの開発」
FIT奨励賞(2015)受賞
1.あなたの研究テーマを分かり易く説明してください
人間の声の特徴を使って本人認証をおこなう,音声認証についての研究をしています.私の研究では画像認証という別の認証手法を組み合わせることによって,より安全な本人認証を目指しています.

2.得られた研究成果を紹介してください
研究室内での先行研究では80%程度の認証成功率でしたが,分析手法を変えることによって,99%を超える認証成功率を確立しました.

3.研究の進め方のコツを教えてください
先行研究の論文調査をおこない,そこから関連知識や技術を取り込むことが,自分の研究成果に繋がると考えています.また,研究で上手くいかないことや,分からないことがあれば,すぐに指導教員の先生と相談するよう心がけています.

4.今後の展開について教えてください
FIT発表後に新たな実験と評価をおこないました.一定の成果を上げることが出来たので,今後はその結果を別の学会や研究会にて発表する予定です.

5.何か感想がありましたらどうぞ
今回の学会発表を通じて,さまざまな方から質問やコメントを頂き,とても有意義な時間になったと感じています.来年も是非参加したいです.


大学院1年 赤木信也さん
発表題目「英文と日本語文の両文に適応可能なリーダビリティ指標の検討」
1.あなたの研究テーマを分かり易く説明してください
文章作成能力の質保証や向上を目的とし、文章の読みやすさ・分かり易さの基準(リーダビリティ指標)を計算機で求める研究を行っています.指標の作成方法として,既存の英語リーダビリティ指標を日本語に対応付ける“変数置き換え方法”を提案しています.

2.得られた研究成果を紹介してください
①他の日本語リーダビリティ指標との比較実験,②英文と日本語翻訳文の比較実験,③医療関連文書の比較実験を行い,英文と日本語文の両文において,提案指標が文章の読みやすさを大まかに分類できることを示してきました.

3.研究の進め方のコツを教えてください
文章には様々な分野のものが存在するため、提案指標の有効性をどのように検証していくかが難しかったです.そこで、どのような実験を行い、どのような図表を作成すべきかについては、先行研究を参考にしながら進めるようにしました.

4.今後の展開について教えてください
今後は,人の評価との比較実験を通じて提案指標の有効性を検証するとともに,提案指標を用いた教育システム・教育方法の検討を進めていきたいと考えています.

5.何か感想がありましたらどうぞ
 先行研究の調査において,大学図書館の文献複写サービスが便利です.


大学院1年 田所龍介さん
発表題目「顔追跡による継続認証システムの構築」
1.あなたの研究テーマを分かり易く説明してください
研究テーマは,顔追跡という技術を用いて,継続的に認証を行うシステムを構築することです.顔認証に限らず生体認証というものは,最初に一回認証を行い,通過するとそれ以降は本人を保証しません.したがって,一度認証を突破してしまうとその後他人に操作された場合,情報を盗まれる可能性があります.その問題を解決するために,一度きりの認証ではなく継続的に認証を行い,なりすまされる可能性を減らすことを目的としています.

2.得られた研究成果を紹介してください
継続的に認証を行うということで,使用者が必ず正面を向いている保証はないので,使用者が色々な方向へ顔を向けている時も認証を行う必要があります.そのため,正面以外の認証率は低い傾向になりました.ですが,正面を向いている時の認証率は高い値を得ることができました.

3.研究の進め方のコツを教えてください
先生によく言われているのですが,研究がある程度進んでから,とかまだテーマが決まってないからといった理由で色々見送るのではなく,テーマがしっかり固まっていなくても,やって発表してみる,といった進め方をしています.少し大変ですが,なんとかなります.研究も進みます.

4.今後の展開について教えてください
近い目標としてはジャーナル一本通したいです.そのために色々な場所で発表を行って,意見をもらい論文を完成させたいと思っています.

5.何か感想がありましたらどうぞ
最初の方は原稿を作るのも発表をするのも大変でしたが,少し慣れて少しは要領よくできるようになったかなと思っています.

星野さん
赤木さん(左),河合さん(右)
田所さん


 アンケートの回答は,「学科ブログの記事に使います」ということで各学生が答えた通りに示しました.人物の性格がそれぞれあらわれているようです.
情報工学科の一教員として学生の持ち味を活かした指導を心がけていますが,自由な発想が得られたら,自分なりの形を実現することを目指して,弛まず進めていくことを常に願っています.

参考URL
FIT2015 14回情報科学技術フォーラム:http://www.ipsj.or.jp/event/fit/fit2015/
・情報処理学会FIT奨励賞:https://www.ipsj.or.jp/award/fit-syorei.html

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