2013年11月29日金曜日

オーストラリア大陸縦断チャレンジWSC2013 車検編6

10月5日(13日目)前編

情報工学科のとある教員です。WSC2013もいよいよ明日から競技開始です。今日はスタート順を決めるサーキット走行による予選と、動的車検が行われます。ここで不合格だと出走させてもらえず、スタート前リタイアということになってしまいます。動的車検とは実際にソーラーカーを走行させてみて、きちんと曲がれるか、止まれるかを測定します。ちゃんと陸運局の職員が計測して、晴れて合格すれば公道走行用のナンバープレートがもらえます。

 簡単に流れを説明しますと、ピットを出てサーキットを1周テスト走行し、そのまま計測ラップに入ります。ゴールした後にそのまま、
 ・ キツいコーナーを曲がりきれるか(最小回転半径)
 ・ スラローム(S字)を高速に通過できるか
 ・ 停止線までに止まることができるか(ブレーキの制動力)
を全参加者と大会関係者(と灼熱の太陽)に晒されながら行います。

 文章だけの説明になって申し訳ないのですが、その理由は私がドライバーだったからです。本当はソーラーカーのドライバー経験が豊富な真庭くんに走ってもらおうと考えていましたが、なんとチームマネージャと通訳は別途仕事があるということで、残された私に役割が回ってきたのでした。なんということでしょう!ほとんど運転したことないのに!聞いていた話とチガウ!

 この車両の操縦は、ちょっとだけ大学構内で体験したことがありました。ただしそのときも車両が未完成で、船便でオーストラリアに発送する直前だったため状況がかなり異なっていました。実際コックピットに入ってキャノピー(運転席のフタ)を閉じると、「ま、前が見えない・・・」マジか、こんなに視界が悪かったとは!そしてヘルメットすれすれで頭がほとんど動かせない!そして極めつけは、蒸発してしまいそうなほど暑い!です。こんなんで出走して壁に激突したら死ぬほど怒られるんだろうな~と思いつつも、スタートの合図が出たら行くしかない。

 初めて乗る車両でも、コーナー2,3コ抜ければだいたいの感覚はつかめる自信がありました。ただしこのときの最大の危機は、ブレーキトラブルが解消し切れていなかったということです。日本からの支援物資でなんとかしようとメカニックが頑張ったのですが、どうしても出走までに完全な状態にはできませんでした。KAIT SPIRIT号は前2後1の3輪タイプで、メインブレーキはフロントの左右に装着されています。そのときは部外者には極秘でしたが、ブレーキが作動するのが右フロントのみという凶悪仕様だったのです。その他、後輪には別系統のブレーキが付いていましたが、駐車用のいわゆるサイドブレーキです。これで止まってくれるのか!?

 そういうわけで、走り出したのはいいものの最初の1週はブレーキのテストに費やしてしまいまして、それでも最終コーナーからホームストレートにかけては車両性能の見せ場だったので最高速度まで加速します。そしてこのとき更なる問題が! KAIT SPIRIT号自慢のテレメトリシステムはスマートフォンを用いて情報をドライバーに伝える仕組みなのですが、ソフトウェアの不具合(いわゆるバグ)で、車速表示が75km/h固定になってしまいました。早い話が、どのくらいスピードがでているのかわかりません。別途GPSを用いた速度計もバックアップで積み込んでありましたが、変なところに付けたせいで見えない!まあ、予選走行はスピードが見えなくても(練習走行もしていない故に)コーナーへの進入速度をつめているわけではないので感覚で走れます。しかし問題はスラロームとブレーキテストです。

 トロトロ走行の安全運転でしたが無事に予選の1週を終え、最小回転半径もクリアしました。さあ問題のスラロームです。ここは35km/hで通過しなければならないのですが、速度がわからないので「まあこんなものか?」とスピードを上げていくと、オフィシャルがなんか合図しています。私には“スピードを上げろ”というように見えたので、仕方なしにさらに加速します。タイヤが風防に当たる感覚がステアリングから伝わってきましたが、S字は華麗に通過!車幅感覚がつかめていないのでパイロンを蹴飛ばしたかと思いましたが一発クリアしました。奇跡だ・・・
そしてそのままの速度でブレーキです。短い足でペダルを目いっぱい踏み込み、さらにサイドブレーキを左手で操作します。車は右を向くのでハンドルを左に切り込んで、さあどうだ!?

つづく

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